《ルンデの会例会》

佐藤豊彦 バロックリュート・リサイタル

フランス様式によるリュート音楽
会場:スタジオ・ルンデ(名古屋市中区丸の内 2-16.-7)

豊彦
2002年3月6日(水)19時
《プログラム》
老ゴーティエ:組曲 ニ短調
デュフォー:組曲 ト短調
ロベール・ド・ヴィゼー:組曲 ニ短調
. S. バッハ:組曲 変ロ長調(BVW.1010)

【参加会費】一般 \4,200、ペア \7,350、学生 \2,100
      一部座席予約可(160席中約50席)
【予約、お問合わせ】スタジオ・ルンデ 
       TEL:052−203−4188

解説:フランス様式によるリュート音楽  佐藤豊彦

 印刷技術の発展と共に1500年以降のイタリアにおけるリュート音楽の隆盛には目を見張るものがあったが、1500年代の終わり頃にはイギリスもその一大中心地の国となり、さらに1600年代に入るとフランスにおいてリュートの革命が行われる。後の18世紀における民主革命でも有名なように、フランス人はその昔から革命好きのようである。その革命とは何であろうか。
 元来リュートはアラビア諸国からヨーロッパに持ち込まれ、調弦法も彼らが使用した4度を基本とするものが1600年頃までは各地でそのまま使われてきた。しかし1600年代に入るとフランスでは色々な調弦法の実験が行われ、老ゴーティエ(エネモン・ゴーティエ1575年―1651年)によって3度を基本とする新しい調弦法が確立された。これは「フランス式調弦法」、「ニ短調調弦法」、「バロック式調弦法」などと呼ばれる。我々がバロックリュートと呼ぶ楽器はこの調弦法を使用したリュートのことである。それまでの4度の調弦法によるリュートを一般的にはルネッサンスリュートと呼ぶが、実はこれには矛盾がある。なぜなら4度の(つまりルネッサンス式)調弦法を持ったリュートは17及び18世紀初頭(つまりバロック時代)になってもイタリアやイギリスでは使用されたからである。
 いずれにせよこの新しい「フランス式調弦法」によって生まれ変わったリュートはそれまでのリュートより長い弦長を持つことが可能になり、中音域から低音域にかけての響きが豊かで華やかになった。そしてその効果をさらに高める「自由奔放な様式」或は「崩された様式」(style bris_)が行われる。これは和音を出来るだけ分散して演奏し、基本の硬いリズムを崩して滑らかに風のそよぐごとく演奏することを言う。さらに装飾がふんだんに使用され、まさにヴェルサイユ宮殿を思わせる絢爛豪華な様式へと発展していく。ルイ・クープランやフロ−ベルガーなどのチェンバロ奏者も競ってゴーティエの演奏を模倣したし、後のガンバの名手マレーも「リュートのごとく演奏すべし」と教えている。
 この影響はゴーティエ派のガロ、デュフォー、ムートンなどに受け継がれるが、特にデュフォーのヨーロッパ諸国漫遊によりドイツ語圏やはるか東欧や北欧にまでも広まる。同じゴーティエ家の一人デニ・ゴーティエは「パリのゴーティエ」、ジャック・ゴーティエは「イギリスのゴーティエ」と呼ばれたし、ピエール・ゴーティエはローマに住んだ。フランスに於いてその「フランス様式」の最後を飾るのがロベール・ド・ヴィゼーである。彼はリュートの他に歌、ガンバ、(バロック)ギター、テオルボの名手でもあり、ヴェルサイユで国王ルイ14世のギター教師も勤めた。ドイツ語圏に入った「フランス様式」は大作曲家バッハにも受け継がれる。このプログラムの作品はほとんど「フランス組曲様式」と呼ばれる様々なリズム(二、三、四、六拍子など)とテンポ(重厚な或は軽快な)を持った「宮廷舞曲」の集まりから成り立っている。その中でも「アルマンド」(二拍子系のゆったりとした舞曲)を用いて作られた「トンボー」と呼ばれる作品は、作者(リュート奏者)が(亡くなった)尊師或は先輩たちに捧げるもので、特に高度に作られている。それらが宮廷で踊られたときの優雅で典雅な格式を偲びながら聴いて頂ければ有難い。


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