35 | ルンデ、20年目に入る | 5月 1日版(第1週掲載) |
36 | ルンデ、20年目に入る(2) | 5月 8日版(第2週掲載) |
37 | 社会的弱者 | 5月15日版(第3週掲載) |
38 | ニホンゴの行方 | 5月22日版(第4週掲載) |
39 | リップサービス | 5月29日版(第5週掲載) |
2000年5月第1週掲載 |
2000年5月第2週掲載 |
●ルンデ、20年目に入る(2)
![]() ゴールデンウィークは、二人の17歳によって引き起こされた無惨な事件のために一気に色褪せてしまった。これらの、「人の心」のいわば常識を真っ向から無視する少年達の「誕生」は、20世紀の所産としてはあまりにも痛ましい結末である。――が、今はそのことには触れない。 さて、そのゴールデンウィークの最後の日7日(日曜日)、ルンデでは「バルトークから獲たもの」と題した、クヮルテット四組によるジョイント・コンサートが行われた。出演したグループは、すべて昨1999年11月のバルトーク弦楽四重奏団による公開レッスンを受講している。それがタイトルの所以である。 ルンデでは、折角訪れた世界的なアーティスト達が、音楽を志す人たち、また音楽に心を寄せる人たちに、コンサート以外にも刺激を与えてくれるようにと、公開を前提とした講座やレッスンの機会を、事情の許す限り持とうと心してきた。開館第1年の、オーボエ奏者宮本文昭による公開レッスンを皮切りに、ホルンのペーター・ダム、チェロのアンドレ・ナヴァラ、同じくボリス・ペルガメンシコフ、ピアノのアンネ=ローゼ・シュミット、ボロディン弦楽四重奏団、(そして幻に終わったソプラノのエリザベート・シュワルツコップ!)などが公開・非公開のレッスンを引き受けてくれた。またタチアナ・ニコライエワ(ピアノ)は再三にわたりバッハやショスタコーヴィッチについての感銘深い講話を行い、またラサール弦楽四重奏団は、アルバン・ベルク生誕100年の1985年の来演時には、第1ヴァイオリンのワルター・レヴィンによる「ベルクの抒情組曲分析」という興味深い講義を、クヮルテットの実演を含む豪華な内容で行ってくれた。 なかでも、バルトーク弦楽四重奏団は、3回目の来演である1987年に始めての「室内楽公開レッスン」を行い、以後、隔年の来日時にそれは続けられてすでに7回に及んでいる。そして1995年、受講者達がその受講の成果を練り上げて発表するコンサートが始まった。誠心誠意熱のこもった指導を繰り広げるクヮルテットから、いかに貪欲に吸収したかを誇示する意味から、殊更このコンサートシリーズには「バルトークから獲たもの」と命名した。今回で3度目となったシリーズは、そのタイトルに恥じない素晴らしい演奏が続いている。 この7日のコンサートでは、ともに難曲である「バルトークの第2番」「ショスタコーヴィッチの第8番」がとりわけ印象に残る好演であり、若い世代が積極的に20世紀の音楽に取り組み、着実に吸収消化しつつある様を実感し得たことは、何よりの収穫であった。そして彼等は、もう来年6月にやってくるバルトーク弦楽四重奏団を心待ちにしているようである。 20世紀の(敢えて「現代」と言わない)音楽に取り組むには、何よりも若い感性とエネルギーが必要である。その若々しい「力」の魅力に惹きつけられつつある人たちが、僅かづつではあるが増加している感触が確かに得られた一日でもあった。 |
2000年5月第3週掲載 |
2000年5月第4週掲載 |
2000年5月第5週掲載 |