ルンデあしながクラブ推薦コンサート
原田綾子 ピアノ・リサイタル
Harada Ayako  Piano Recital

原田

【プログラム】
J. S. バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV.971
ブラームス:ハンガリーの歌の主題による変奏曲 Op.21-2
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35-1
ブラームス:三つの間奏曲 Op.117 より 第1番、第2番
ブラームス:八つの小品 Op.118 より 第3番
スクリャービン:ソナタ 第3番 嬰ヘ短調 Op.23

2003年8月20日(水)19:00(開場 18:30)
スタジオ・ルンデ
(名古屋市中区丸の内 2-16-7)
全自由席 2500円(当日3000円)/学生 1000円
【予約、お問合わせ】ルンデ TEL:052−203−4188
コンサートに寄せて   原田綾子
 昨年10月の、ロシア出身のヴァイオリニスト・ユーリー・ブラジンスキー氏との共演は、一週間足らずではありましたが、過ごした時間の密度は大変濃く貴重なものでした。ブラジンスキー氏からは音楽そのものだけでなく、演奏家としての心構えやマナーなど色々なことを教えて頂きました。
 その時に、ユーリー・ブラジンスキー氏の兄、アレキサンダー・ブラジンスキー氏が、毎年ウィーン夏季セミナーで教えていらっしゃることをお聞きし、もし機会があれば・・・とお勧めいただきました。もう、これはぜひともウィーンへ行かねば、という感じでこの夏受講してまいりました。
 アレキサンダー・ブラジンスキー先生は、現在ミネソタ大学教授としてピアノを教えていらっしゃいます。先生はアメリカへ渡って30年になるそうですが、ロシア(当時はソ連)にいた頃は、ブラジンスキー先生の恩師がスクリャービンと同級生ということもあってか、スクリャービンの家にも出入りしていたそうです。その頃すでにスクリャービンは亡くなっていましたが、家の中には彼の雰囲気が生きていたということです。

 自身も名ピアニストであったスクリャービンは、舞台で華やかな脚光を浴びていた一方で、一人内にこもって思索にふけり、思想をノートに書き留める一面がありました。彼は、ショパンに影響を受けた初期から、神秘主義哲学に傾倒していった後期まで、10曲のピアノソナタを作曲しました。今日弾かせていただく第三番は、初期の最高傑作であり、《魂の状態》という副題がつけられています。各楽章にもスクリャービン自身により次のような標題が残されています。
○第1楽章:自由奔放な魂が激情にかられ、苦悩と闘いの深淵へと飛び込む。
○第2楽章:魂は束の間の偽りの安らぎを見出した。だが,軽快なリズムも透明な和音も単なるヴェールであり、傷を負い、不安におののく魂の姿が向こうに透けてみえる。
○第3楽章:魂は流れに任せ、優しさと哀しさの海原に漂う。それは愛、淋しさほのかな希望、言葉にならない思い、はかない夢の魔力……。
○第4楽章:嵐のように猛威をふるう自然の力の中で、魂は狂ったようにもがき闘う。やがて,存在の深い谷底から、創造者の雄叫びが聞こえる。だが、頂きに達するには力が弱く、非存在の底へと突き落される。
 レッスンでは、ロシア音楽のイントネーションについて教えをうけました。音楽はその国の言葉と深く結びついており、国々の音楽は、言葉のように、抑揚、アクセント、スピードなどが少しずつ異なっていると。先生は、身振りを交えながら、「例えば、とても低い音からスロウ、スロウ・・・、そして突然大きなアクセント、急激にスピードアップし、突然スロウダウン・・・」と、変化の激しいロシア語について説明してくれました。そして、そのイントネーションが音楽の中ではどうなるか、ピアノで示してくれました。

 九月から過ごすハンガリー。マジャール語に毎日触れ、今まで弾いてきたリストやバルトークに少しでも違ったニュアンスが加わればと願っています。
原田綾子 プロフィール
 名古屋市立菊里高等学校音楽科を経て愛知県立芸術大学音楽学部ピアノ科に進み、同大学定期演奏会、卒業演奏会に出演。2003年同大学大学院修了。
 高校在学中よりピアノ三重奏グループ「メロマン・トリオ」を結成し、室内楽コンクールで多数入賞。同トリオとして1997年5月スタジオ・ルンデに於いてバルトーク弦楽四重奏団の公開レッスンを受講し、好評を博す。
 日本ピアノ教育連盟主催第15回ピアノオーディション全国大会入賞、浜離宮朝日ホールに於いて入賞者演奏会に出演。朝日新聞社・日本室内楽アカデミー主催第三回若手奏者のためのコンペティション・デュオ室内楽部門第2位、第1回日中友好長江杯国際コンクール・グランプリ。ロンドン・ミュージックスクール・サマーコースに参加、ファイナルコンサートに出演、Highly Commendedを受賞。ロンドン国際音楽コンクール・デイプロマ賞受賞。
 2001年2月ドヴォルザーク室内オーケストラとショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番、12月シュトゥットガルト弦楽六重奏団とシューマンのピアノ五重奏曲、2002年5月、名古屋フィルハーモニー交響楽団とラヴェルのピアノ協奏曲を協演。
 同2002年10月、ロシア生まれのヴァイオリニストで「六つの国際コンクールを制した男」として知られるユーリ・ブラジンスキーの日本でのリサイタル・ツアーに協演ピアニストとして選ばれ、その音楽的な柔軟性を高く評価された。
 ソロ・コンサートのほか、優れた室内楽奏者としても多方面に活動している。
 細田和枝、森本恵美子、宇都宮淑子、重野和彦、ローラント・ケラーの各氏に師事。

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