田中晶子 & 鎌田慶昭 |
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《ルンデの会7月例会》 【出演】 田中晶子(vn)、 鎌田慶昭(gt) |
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【プログラム】 ※ヴァイオリンの 田中晶子は桐朋音高からギルドホール音楽院に学び、1990年シベリウス国際コンクールに日本人として初めて上位入賞(1位なしの3位)、また95年のヴィエニアフスキ国際コンクールでも3位(1位なし)を獲得、現在ドイツに在住しヨーロッパ各地で活躍中。 |
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★ニコロ・パガニーニ(1784−1840) 「悪魔のヴァイオリン弾き」で知られた彼は、当時実はギタリストとしてもかなりの噂を集めていました。小さい頃からギターに馴れ親しんでいた彼にとっては、ヴァイオリンと同じ位自由自在に操ることのできる、なくてはならない存在だったのです。すでに「24のカプリース 作品1」では、特にピツィカート、フラジオレットの奏法など、彼がギターから受けた影響は明らかです。いってみればパガニーニは素晴らしい彼独自のヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾ的奏法を、ギターもと弾いていたおかげで確立できたとも言えるのではないでしょうか。 ギター関係の曲は大変多くの数=200近くが残されていますが、それにはちょっとしたエピソードもありました。何かとゴシップの多い彼ですが、1801年から1805年の間に突然姿を消し「パガニーニが刑務所に入れられた」よのうわさが流れました。本当はなんのことはなく、フィレンツェのマダムの腕の中で無邪気に休養していただけ(!)だったのですが、この女性がギター奏者だったことがパガニーニの又違った分野での才能を発揮させるきっかけとなったのでした。ふたりで一日トスカーナの田舎を散歩し、夜には多分ステキな愛のデュエットができあがっていたことでしょう。こうして多くの作品が生まれていきました。 イタリアの歌心に溢れた旋律は「カンタービレ」に一番よく表現されていますが、胸に滲みるようなこの美しいメロディーは、パガニーニの中でも特に素晴らしいものだと思います。「チェントーネ・ディ・ソナタ」(チェントーネはメドレーといった意味)、「ソナタ ホ短調 作品3−6」は共にサロン風の可愛らしく楽しめる作品になっています。「ソナタ・コンチェルタータ」は原典版にも「ギターとヴァイオリンの為に」と書かれていて、二つの楽器での対話がはっきり表現されているのが特徴的です。 「モーゼ・ファンタジー」=ロッシーニのオペラ「エジプトのモーゼ」からのテーマのヴァリエーションで成るこの曲は、すべて一本のG線のみで演奏されます。パガニーニは人から嫉妬されることを大変おそれて、自分の作品だけでなく、練習の仕方まで秘密にしていたと伝えられていますが、ある日嫉妬に狂った同僚がパガニーニのヴァイオリンを壊して弦を全部切ってしまい、かろうじて残った、たった一本のG線で即興演奏をした時に、この曲が誕生したといわれています。 ★アストル・ピアソラ(1921−1992) アルゼンチンタンゴの変革者、モダンタンゴの創始者ピアソラの作品はその没後、近年クラシック楽壇で多く取り入れられ知られるに至った。若い頃からバンドネオンの名手として知られたが、当時の保守的なタンゴの芸風に満足できず、作曲をA.ヒナステラ、N.プーランジェに師事、彼の独自のスタイルを完成し、アス・ピアソラ五重奏団を組織し、その後生涯を演奏活動に費やした他、歌手、ミルバとの共演や映画「ガルデルの亡命」の音楽を担当するなどの活動が目を引く。 「アディオス・ノニーニ」は彼のバントの代表作と言える作品。事実、演奏、録音回数も多い。父の死を悼んで書かれ、彼らしいフレーズが繰り返されるリズミックな部分と美しい哀歌のコントラストが印象的。 次にギターソロで、ピアソラがアルゼンチンのギタリスト、R.アウセルの為に1982年に書き下ろした「ギターの為の5つの小品」から3曲紹介する。アルゼンチンの地方に広がる大草原(タンバ)を描く「カンベーロ(草原)」。もともと「神父」の意味の言葉だが、ブエノスアイレスの下町を伊達男をこう呼ぶ「コンバドレ(伊達男)」(日本語で言えば「よ! 大将」といったところか)。ピアソラらしいアクセントの効いた「アセントゥアード」。演奏に当たっては被献呈者、R.アウセルの改訂版を使用する。 ベルギー、リェージュ国際音楽祭の委嘱で作曲された「タンゴの歴史」。4楽章構成でアルゼンチンタンゴ発祥から今日までの100年をたどる。一応、フルートとギターの為に書かれているが、メロディーパートは色々な楽器で奏しても良いとピアソラ自身が語ったという。フルート以外、ピアソラのおすすめはバンドネオンとヴァイオリン(どちらも五重奏団の編成楽器)。タンゴの発祥はフルートとギターであり、バンドネオンはまだドイツから輸入されていなかった。この曲のオリジナル編成(フルート、ギター)はピアソラのタンゴ発祥への敬意の表れであろう。「娼館1900」、「カフェ1930」、「ナイトクラブ1960」、「今日のコンサート」。楽章間のコントラストも際立った名曲。こちらもR.アウセルの改訂版を使用する。 |