●だから、お上の言うことは信用できない
「どこまで続く泥濘(ぬかるみ)ぞ」――最近の政局の混迷具合から、唐突に、こんな唄を思い出した。かつての「軍歌」である。因みに、日本の軍歌は、どういうものかあらかたが、兵士達の厭戦感が滲み出ている様な、暗い、詠嘆調のものだった。後になって現れた「官製」のものは威勢が良かったが……。
閑話休題。
例のNGO問題の行く末を見守っている内に二週間近く経過、まだまだ余燼が燻っていて、なかなか幕が引けない。いきおい、この欄のための筆も止まったままだった(ほかにも一杯言いたいことがあるのに、とにかくこの問題をヤリ過ごす気には到底なれなかったのだが)。
一応は、政治的には訳の判らぬ「喧嘩両成敗」とやらで、田中大臣、野上次官の両方を首にしてチョン。騒動の張本人は申し訳程度に役職辞任で澄ましている。小泉サンは事無く治めたつもりかも知れぬが、「黒を白とし、白を黒とした」ことが「喧嘩両成敗」とは、よく言うよ。しかも問題の発端となった「事件」の「被害者」の証言がうち捨てられて、無意味な問答だけが繰り返されたじれったさと空しさ。
一連の経過を報道する新聞の紙面で、最重要な人物=NGO代表の記者会見が社会面扱い(いわゆる三面記事)、恫喝常習の小狡い国会議員が所属派閥の会合で英雄扱いされるのが政治面とは、どうにも納得いかぬ。敵と「刺し違えた」ものを称賛するなど、まるっきりヤクザの世界ではないか。どっちが「政治」面でどっちが「社会」面に相応しいことか……。
政府は後任大臣に、なんと緒方貞子女史を引っぱり出そうとした、とは正気の沙汰ではない。今の日本で、国際的に一目も二目も置かれ尊敬されているほとんど唯一といえる貴重な人材を、こともあろうに「人寄せパンダ」に使って外務官僚のカイライに仕立てようとは。如何に何でも「そりゃ聞こえませぬコイズミサン」。
それは幸いにして女史が断ったから良かったが、続いて起こった農水相の不信任問題では、「投げ出すのは卑怯。仕事を全うせよ」と大臣辞任を引き留めている。外相更迭とは全く正反対の強弁……
さらに、ごく最近になって、NGO問題には議員が関わっていたと思われるフシがある、などと言い出す有様では――「どこまで続く泥濘ぞ」。
まことに、お上の言うことは信用できない。
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